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夢を見るだけなら、誰にも迷惑はかからない。
別に棗くん本人に対して、『いつか私をお嫁さんにして下さい』だなんて迫るつもりも全くない。
今は私と一緒にいてくれているけれど、もしも棗くんに他に好きな人が出来てしまったら。
もしも私以外の女性と、運命的な出会いをしてしまったら。
それで、別れてほしいと言われてしまったら。
私はきっと引き止める事なんか出来ない。
引き止める資格が、私にはないから。
結局、いつまで経っても自分の病気の事は自分が一番気にしてしまう。
他人からみれば気にならないような事でも、私からすればかなり重要な事だったりもする。
棗くんは、私の苦しみを半分背負うって言ってくれた。
あの言葉は、本気で嬉しかった。
嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
あの言葉のおかげで、気持ちが凄く楽になった。
あの言葉さえあれば、どんな壁でも乗り越えていける気がした。
『ずっと、私の傍にいて下さい』
プロポーズみたいな言葉を、いつか棗くんに言えるときが来るといいな、なんて思っていたけど。
それは自分の胸の内に留めておく事にした。
「純ちゃん?…純ちゃん!」
「…っ、はい!」
ハッと我に返ると、私の目の前には眉をひそめた棗くんと…その隣には棗くんの親友の関さんが含み笑いを持たせながら私を見つめていた。
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