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都内病院
「もうお母さん!食べ過ぎで胃炎になるかな普通?」
「えへへ、ごめんなさい......」
救急員に電話で「お母さんが病院に搬送されました」とだけ伝えられて急いで来たらこの様子だったので、美鈴は思わず苛立ってしまう。
「大丈夫ならいいよ、もう私仕事に戻るね」
「うん、いってらっしゃい」
美鈴は多恵の状態を確認だけをして仕事に向かった。
ずっと気に掛かっていた
ずっと何かに物足りなさを覚えていた
人間必ず物事を忘れてしまうが、それ以上にもっと大切な何かを忘れている気がした
「えい!!」
「やあ!!」
「......」
仕事場までの道のりに、今まで見なかった剣道道場で多くの人が竹刀を振っていた。
______......
「「っ......!!」」
_____
「え......?」
まるで記憶の片隅のように、袴を着た少年が美しく竹刀を振るう姿が脳裏を過ぎった。
______
「「......何だ美鈴、また見てたのか?」」
______
「......そんな」
美鈴は目に涙を浮かべていることに気付かずに、そのまま無意識に垂れ落とした。
「___成馬」
その人物が誰なのかも、自分とどういう関係があるかなんて分からない。
ただただ懐かしく、そして悲しい感情に美鈴は襲われるのだった___
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