68人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
その祈りは、見事に打ち砕かれた。
決して強欲なまでの祈りを神に捧げたわけではない。
自分の居場所と、守るべきものがあれば
少なからず自分は生きていけたのだから____
「何で...どうしてこんなことに...」
屍のように全く動かなくなった彼女の体から徐々に体温が失われているのが分かった。
いや、既に手遅れだった。
「っ...!?冗談だろ...!!」
死んでなんかない、まだ生きてるはずだ。
だって、現に左手と右脚がもがれた自分だってまだ体は動いているのだから。
「生きてないよ、そいつも今まで死んでいったお前の仲間同然に屍に成り下がった」
「嘘だろ...そんなの嫌だ...こんな現実受け止めたくない...!!」
力を望んだ
この不条理な世界を打開する力を
彼女を救えるほどの力を
「ならば、悲劇を望め」
「悲劇...だと...?」
「それだけを望めば、力が手に入る、ただしお前はもう...」
その先の言葉は予測できた。
恐らく、その力を手に入れれば俺は俺で居られなくなる。
だが、そんなのどうだっていい
彼女を救えれば、それだけで何ともなかった。
『俺は、悲劇を望む』
その後男の体に黒い靄が漂い、体を吸い尽くした。
すまない...
俺はもう、この世界には帰らないだろう
だけど少しだけ、俺の理想を聞いて欲しい___
『こんな理不尽な世界でも、嫌いにならないでくれ』
確かにそれが、始まりの悲劇だった___
____
最初のコメントを投稿しよう!