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「あ……ごめんね。ヒゲ剃り出来なくて」
「寒い時はこたつでやってるから気にしなくていいよ」
「うん……初めて見た……」
俺は大間さんの横にペタンと座ると、しげしげと大間さんの顔を眺めた。
「ふーん……」
「ん?」
「触っていい?」
「ん? 残ってる?」
顎を上げて俺の方に首を晒す大間さん。
訳の分からないドキドキを感じながら、そっと手を伸ばし、大間さんの首から顎、頬へと手のひら全体を使って撫でた。
「……ザラザラしない……」
「おお! バッチリだな! こっちは?」
そう言って反対側を同じように晒してくる。俺は舌で唇をペロリと舐めて、今度は両手で大間さんの頬を包んだ。
「ふふ……気持ちいい」
「んだそれ」
微かに笑った大間さんは、少し照れくさそうに見えた。
俺の発言変だったかな? と焦って付け足す。
「俺、あんまりって言うか、ほぼほぼヒゲ生えないから……ちょっと感動しちゃった」
大間さんは俺から視線を少し落とし、引き寄せられるみたいにじーーと俺の口元を見つめる。
「いや、生えるよ? 生えるけど……そんな濃くないって言うか……」
熱心に見られるのも恥ずかしい。左手で隠すように顎を擦った。
「いいな! 羨ましい」
「うーん……そうかな? なんか、昔っから体毛薄くてさ……俺の男性ホルモンどこいっちゃったんだろう」
「毛なんて気にする事ないよ。ここにちゃんとあるんだから」
ワサワサと頭を撫でる大間さん。
「ちょ、ここまで無かったら大変だよ」
笑いながら突っ込むと、大間のさんは気の抜けた優しい笑顔になった。昨日の辛そうな表情じゃない。俺はホッとしてコタツのスイッチを切った。
「服着るね」
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