第十八話 本音

2/7
前へ
/113ページ
次へ
 電車で行った挙句に、大勢の人とダラダラ歩いてお参りなんて嫌だと大間さんと意見が一致。相談の結果、あえて有名な神社を避けることに決定した。  小春日和の日差しの中、ドライブがてら初詣へと出かける。  以前、マス釣りへ出かけた八王子方面へ、適当に車を走らせる。どんどん高いビルが無くなり、景色が茶色くなっていく。ちょっと前に来た時はまだ黄色や赤色の葉をつけていた木々も、すっかり枝だけになっていた。  なんとなくだけど……釣り堀のある山に入る手前で、それらしき建物を見た記憶があるんだよねぇ~……違ったかなぁ……。  朧げな記憶を頼りにノロノロと走っていると、十字路が現れた。一時停止して左右を確認した時、右に白い旗が何本も立っているのがちらっと見える。 「あ、大間さん! 神社発見!」 「じゃあ、そこにすっか」  ウインカーを出して右折する。ノロノロと旗を目印に近寄ってみれば、『参拝客専用』とある看板が立つ小さな駐車場。駐車場は五台分のスペースがあったけど、車は二台しか停ってなかった。 「ラッキー。停めれるじゃん。やっぱり三ヶ日過ぎると空いてるね~」 「丁度いい頃なのかもね」  小さな神社ならどこでもいいと思ってたけど、車を停めて散策してみたら、神社周りの古い町並みは整備されてて、なかなかいい雰囲気だった。  小川に沿って整備された遊歩道には、柳の木が等間隔で生えてた。今は枝だけになってるけど、夏には涼しげに葉をゆらゆら揺らすに違いない。  『珈琲』と看板が出たシックなカフェや、個人ギャラリーのお店。「高尾の月」とか「八王子饅頭」とか聞いたことあるようなお菓子が置いてあるお土産屋もあった。ちょっと目を引いたのはサツマイモスイーツ専門店。「ポテトアップルパイは店内で焼いてます」って張り紙と、甘い匂いに胃がグルグルしそうだ。 「なんか……思ったよりって言ったらアレだけど、いい感じだよね」  お腹を摩りながら大間さんを見ると、建物を指差して大間さんが言った。 「湯豆腐だって。お昼ご飯はあそこにすっか」 「おー! 湯豆腐!」 「好きかい? 湯豆腐」  俺の反応に嬉しそうに聞いてきた。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

799人が本棚に入れています
本棚に追加