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厨房に入ると、だし巻き卵も丁度出来上がってる。ふわふわで上品な黄色の卵。アツアツの証拠の湯気がホアホアと昇っていく。大根おろしを小さな山の形にしてだし巻き卵の横へ添え、カウンターから大間さんへ出した。
「はーい。だし巻き卵でーす。お待たせしました」
「ありがと。ホッケ、マジ旨いわ。めっちゃくちゃ脂のってる」
ホッケをプリッと箸でほぐし口に入れ、御飯を豪快にほおばる。頬を膨らませ「うんうん」頷いて食べてる大間さんはとても幸せそう。
なんて可愛いんだろう。ニコニコが伝染してくるよ。
「でしょ? だから特別ですってば」
「うん、うんまい」
今度はだし巻き卵を食べる。箸で一口サイズにし、そっと掬って口に入れると椅子に背を預け、「ん~」と悶えてる。
「ぷぷ」
至福って感じに溶けそうな表情をしてる大間さん。つねりたくなるほっぺだ。こんなに喜んで貰えて、大将もきっと嬉しかろう。
二口目は大根おろしと一緒に。
「あ、その大根おろしは私が心こめて擦りました」
「マジか! どうりで甘い! 美味しいよ」
目を丸くし、口をすぼめ感心したように言うと、今度は目を細め緩い笑顔を向けてくる。
ホッケ、御飯、だし巻き、お酒をちょいちょい挟みながら、家で御飯してるみたいにあっち食べ、こっち食べな大間さん。
「やっぱ、ここのご飯が一番だわ。もー、他じゃ食べる気になんないもんね」
「ありがとございます!」
強面の大将が精一杯笑顔を作ると、大間さんはビックリしたのか目を丸くして次にニコニコ頷いてくれた。
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