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大間さんは神社の方へ向けていた顔をこちらに向けて言った。
「そうだ、お守り買う?」
「お守り?」
「車乗ってるし。買わないかい? 交通安全の」
「なるほどー。じゃあ、買おうかな」
神社の横に建つ、『お守り』と書かれた白い看板が立てかけてある小屋へ向かう。
いろんなお札やお守りの数々。学業、厄除け、交通安全、縁結び、色も形のバリエーションも共に豊富。どれを買えばいいのか判断に少々戸惑ってしまう程。
大間さんも興味ありそうにいろいろ目を通している。木彫りの十二支のお守りを一体一体手にとってはまじまじ見つめ、小さなひょうたん型のお守りの中を覗いて「おお、すっげ」とか独り言。
楽しそうだな……。
うきうきしてた大間さんの目が一角に止まる。しばらくそれを手に取るでもなく見つめ目をそらした。大間さんの視線の先にあったのは。「家内安全」のお守りだった。
「決まったかい?」
しばらくして声をかけてきた表情も声も、いつもの大間さんだった。
「あ……うん。交通安全あったよ。でもいろんな色があるんだね。お守りってなんかこう……もっと渋い感じかと思ってた。昔とイメージ違うのね。ほら、ピンクとか黄色とか、凄くカラフル」
「可愛いね」
優しい微笑みで言う大間さん。でも、寂しげに見える。
「大間さん何色が好き?」
「青かな」
「じゃ、青色の交通安全にしよっかな」
「俺の好みでいいの?」
そう言った大間さんの笑顔からは、さっきの寂しい影が消えたように見えた。
「うん。これください……あ……」
俺が手にしたお守りをヒョイと横から取り、お尻ポッケから財布を抜き取りながら巫女さんの格好の女の人の前に立つ大間さん。
嬉しくて、財布からお金を出す大間さんの背中をじっと見つめる。
大間さんへ袋に入ったお守りを渡した巫女さんが、俺にちょっと……いや、だいぶニコニコしてみせた。
さっきまで無表情だったのに。
自分の気持ちを見透かされたような気がして口元に力を入れる。
きっと巫女さんもお守りが売れたから嬉しいんだろう。
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