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俺はテーブルの空になったお皿を回収しがてら、大間さんの座るカウンターへ後ろからそっと近づいて、右隣に立ち、そっと小鉢を置いた。
「はい……」
「ん? おぉ~、いつも悪いね。ヨロシク言っといてね」
コソコソと俺の耳元で話す大間さん。少し眠いような甘ったるい声音はくすぐったい響き。俺はニッコリ微笑んで大間さんから離れた。
大間さんは厨房の大将と目が合うと顔を前に出すようなお辞儀をした。
そして一品増えたオカズを美味しそうに食べる。
「はぁ~、食ったなぁ。ご馳走様でした」
お腹をさすり、手を合わせてご馳走様をしてる。
「ありがとうございます! サト、お勘定」
「ありがとうございます!」
大将に言われるまでもなく、それを見て伝票を大間さんのところまで持っていく。
「はい。いつもありがとうございます」
大間さんは腕時計をチラッと見る。
俺が言った事忘れてないかな?
大間さんは俺の顔を覗くように上目で見て言った。
「まだ、早いよね……」
「そうですねぇ。あと一時間」
大間さんはドリンクメニューを手に「うーん」と唇を突き出し、顎をつねりながら追加のお酒を考えてるようだった。
十一時まで待っててくれるつもりなんだ。
「どれがいいと思う?」
そう言って、俺の方に肩を寄せてメニューを開いた。
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