第三話 水餃子

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 あの時の感情を今思い出しても、上手く説明することはできない。  俺の今までの人生で、同性に対して一度も起こり得なかった感情。  人間的に好きな人だと直ぐに感じた。腰が低いし、いつもフニャ顔で笑うし、放っておけないという魅力も感じた。  ドライブに行こうと口約束したら、次に店に来た時には「ドライブどこに行こうか」と言ってくる。  それがあの口約束が社交辞令じゃなかったっていう証で。  俺はそれが妙に嬉しくて。  そういう小さな「嬉しい」の積み重ねが、いつの間にか「愛しい」という感情にすり替わっていったのだろうか?  日に日に俺の中で大きくなる「篤」  それでもまだ、気の合う常連さん。年上の友達。  一緒に居ると、とても居心地がいい人。  それだけのつもりでいたんだ。
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