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「……寒いっつーの」
指がかじかんできた。
もう一度メットを被り、今度は落とさないように手袋を取り出すと、両手へ装着した。原付きに跨りエンジンをふかす。
もう、この道を通ったってあなたを見つける事はない。
なのに、酔っ払ったサラリーマンの背中を見る度に、一瞬スピードを緩めてしまう。
家の近くの公園まできて、原付きを停めた。
メットだけ外し、原付きに跨ったまま、左ポッケからタバコを取り出す。一本咥え、安い百円ライターで火を点けた。
「…………」
深く吸い込み、肺からゆっくりと煙を吐き出す。
初めてシちゃった時、気恥ずかしさを誤魔化すようにタバコを吸った。
なんて言葉にしていいのか分からなかったから。
禁煙中だったくせに、あなたは俺の吸いかけのタバコを奪い、湿ったフィルターにその唇をつけた。
その仕草が妙にエロくて、ずっと見つめていたいような、目を逸らしたいような、変な気持ちになったよ。
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