788人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
「え? いいのぉ? それ、かなり助かるわ」
「うんうん。先週のお礼です」
「おれい?」
「先週、俺の手袋拾ってくれたでしょ? 俺ね、しょっちゅう片方無くしちゃうの。アレも買ったばっかだから、助かったの」
俺は本日のオススメメニューを大間さんへ差し出しながら無駄話を続けた。
「お……ぉ~、なんか悪いねぇ。拾っただけなのに」
「ふふふ。本日のオススメはホッケ一夜干しと、マナガツオの照り焼き。それからたこ刺し。あとは肉じゃがコロッケ……かな?」
「じゃぁ、ホッケとたこ刺しもらおっかな」
「はーい。ライスは小? 中?」
「腹減ってっからな……中で。あ、だし巻きも。それから熱燗ね」
「はーい。大将、ホッケ、たこ刺し、だし巻き入りましたー」
「あいよ!」
大将がだし巻き玉子を作ってる間に、俺はなるべく大きなホッケを選び網に乗せコンロの火をつけた。大間さんをチラッと見る。
さっきは嬉しそうに食べてた湯豆腐の付出し。それを箸を手にじーっと見つめてる。
ボーッとしてんなぁ。
「たこ刺し」
「あ、はい」
大将がお作りにしたたこ刺しと熱燗をカウンター越しに大間さんへ渡す。
「はい。たこ刺しと熱燗ね」
「おー、ありがとお」
ニコニコとそれを受け取り、お猪口に手酌する。
ホッケを焼いていると大間さんの視線を感じた。「追加オーダー?」と思って、チラと大間さんを見ると目が合った。俺に向かって「いただきます」とお猪口をちょっと持ち上げる。
俺がニッコリ頷くと、大間さんはクイとお猪口を傾けた。
最初のコメントを投稿しよう!