教科書

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人懐っこい新のペースに巻き込まれているうちに、いつの間にか僕もクラスに馴染んでいた。 「ほら、元気だして。 次は新が好きな社会だよ」 「うん」 体育会系の新は、なぜか文系の科目が得意なんだ。 部活はサッカーなんだけど、本を読むのが大好きで、図書室にも一緒に行ってくれる。 社会と聞いて目を輝かせる新を見てクスクス笑っていると、突然クラスに大きな声が響き渡った。 「川嶋(かわしま)いる?」 「あー、今日は休みだよ。サボりじゃねー? 昨日遅かったし」 「まじか。数学の教科書借りようと思ったのに。 じゃあ、お前でいいや貸して」 「残念。俺も借り物。 神崎2組だったよな?竹田に返しといて」 大きな声のやり取りのなかに、聞き覚えがある単語が聞こえた。 神崎? 思わず声の方を見ると、あの中庭で見たイケメンが立っていた。
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