教科書

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「数学、マジだるい」 後ろの席の新(あらた)が勢いよく机に突っ伏しながら叫ぶのを聞いて、僕はクスクス笑った。 高校に入学して2ヶ月ちょっと。 人見知りの僕は最初友達が出来るか不安に感じていた。 そんな時声をかけてくれたのが、後ろの席の橘 新(たちばな あらた)だった。 「俺、橘 新。よろしく」 「あ、僕は清水 颯(しみず そう)。よろしくね」 照れながら自己紹介した僕を新はじっと見て言った。 「清水って、俺ん家の猫に似てる。 黒猫のカイって言うんだけど。 だから、初めて会った気がしないんだ」 はぁ? 猫に似てるって言われたのは初めてだ。 失礼なことを言われてるのかもしれない。 黒猫だし…… でも、あんまり嬉しそうに話すから、なんだか嬉しくなってしまった。 「颯(そう)って呼んでもいい?俺のことは新(あらた)って呼んでよ」
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