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「瀧川くんてさ……優しいよね」
「……何、急に。どしたの」
突然呼び出されて出向いたコーヒーショップで、向かいの席に座って俯いたまま呟いた彼女の唇は、うっすらと笑みを象っていた。
──あぁまたか、と思ったけれど、顔には出さない。
どしたの、とヘラリと笑ったら、きゅっと唇を噛んで顔を上げた彼女の泣き出しそうに潤んだ瞳に睨み付けられて。
内心、溜め息を吐いた。
「でもさ、それってさ……あたしのこと、好きだからじゃないよね」
「……何言ってんの」
好きに決まってんじゃん、と付け足したくせに、自分でもその台詞のわざとらしさに笑ってしまった。
「瀧川くんさ……。……誰にでも優しいから。……勘違いする」
「勘違いじゃないって」
「勘違いだったよ」
「……」
まるでオレの言葉に被せるように、ぶった切るみたいに放った後、彼女は黙ってオレを静かに睨んでいて。
何か言おうとして口を開いたものの、結局、何も言えずに黙り込む。
──どうしてだろうか。
付き合って欲しいと言われて付き合って。
買い物も、映画も、食事も。ちゃんと付き合ってるというのに。
いつも、同じ結果になる。
何が悪いのかもサッパリ分からないまま違う女の子に告白されて、また付き合って、別れて。
繰り返しだった。
みんな違う女の子なのに、みんな同じことを言って離れていく。
弄んでるつもりなんてこれっぽっちもないし、その時々で付き合う女の子達にちゃんと向き合ってきたつもりなのに。
いつも結局こうなる。
「もう別れよ」
「……」
「あたしのこと──好きじゃないんでしょ」
静かに断定する口調と、泣きながらもオレを責める目。
そんなことないと反射的に叫べないんだから、やっぱりオレにも原因はあるってことなんだろうか。
「…………何も、言ってくれないんだね」
淋しそうに呟いた彼女が、そっと涙を拭って。
「……さよなら」
するりと立ち去っていく。
その後ろ姿をじっと見送りながら、やれやれと溜め息を一つ。
(なんだかなぁ……)
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