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司に貸す服を見繕う前に、自分も濡れた服を苦労して脱いで。ざっと体を拭いたら、とりあえず乾いた服に着替えてしまう。未だポタポタと水が滴り落ちてくる頭には、一時しのぎにタオルを巻き付けておく。
どさくさ紛れに強く抱き締めた体は随分と華奢だったなと思い出しながら、タンスをごそごそと探って。
これなら多少サイズが違っても気にならないだろうと、ジャージの上下を揃えて風呂場に向かう。
「司、着替え置いとくから」
「あ、ありがと」
わかりやすい場所に着替えと新しいバスタオルを置いて、自分が脱いだ分の服を洗濯機に放り込んでスイッチを入れたら。
その後ろで響くシャワーの音に今更気付いて。
ギクリと、胸の奥が跳ねた。
下心なんて、あるはずがなかった。
それなのに。
今、まさにすぐ傍で。
大好きな人がシャワーを浴びているのだということに、今更気付いて。
欲を、掻き立てられた。
(──何考えてんだよオレはッ)
生理現象ながらに、自己嫌悪が止められない。
落ち着けと言い聞かせながら、乾いたタオルを手に廊下の水滴を拭いて回る。
ドギマギと跳ねる心臓の音がうるさくて。
わざとドタバタ動き回りながら、邪な想いを必死で振り払った。
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