6. 君が教えてくれたこと

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「迎えに来てって……独りで置いてかないでって……ずっと……ずっと、思って……ここで、待ってたんだ」 「……」  何も言えないまま、オレも司につられたみたいに空を見上げる。  何か言わなきゃと思うのに、何を言っても空々しいような気がして、何を言ったらいいのかも解らなくて。  ただ小さな頭にそっと手を添えて、ぽふぽふと撫でてやることしか出来ない。 「なんで……オレが生き残っちゃったんだろうって、ずっと思ってた。……オレは、オレ一人じゃなんにも出来なくて……。オレなんて生きてても意味ないのに、なんで章悟は、オレなんかを助けるために、死んじゃったんだろう。……オレなんて、あの時に死んじゃっても良かったのに」 「つかさ……」 「オレなんかが、独りで……生き残るくらいなら……」  オレが死んだ方が良かったのに。  そんな風にぽつりと呟いた司の声は、未だに癒えない傷を思わせる音を響かせて。  撫でる手が、止まる。 「司」 「…………うん」 「……オレは……『しょうご』のこと、知らないし、その時どう思ってたかなんて、分かんないけど……。『しょうご』は、司のこと助けたくてそうしたんだと思うけど。…………たぶん、理屈なんてなかったと思うよ」 「……なかった?」  虚ろな目が、オレをぼんやりと見つめるから。  しっかりと視線を捕らえて、頷いて見せる。 「助けたいって、……誰かのこと……大事な人のこと。助けたいって、思うのはさ……理屈なんてないと思う。咄嗟に司のこと突き飛ばさなきゃって……助けなきゃって、思ったんだよ。──自分が死ぬとか、そんなこと考えてなくて……ただ、とにかく、司のことを、助けたかったんだと、思うよ」 「……」 「生きてて欲しいって……大好きな人には、いつもどっかで、生きてて欲しいって……オレでも思うよ」  オレの言葉を、噛み締めるみたいに。じっと、オレを見つめてた司が。  だけど、ゆるゆると首を横に振る。 「…………でも。……独りで生きてたって、全然嬉しくないよ。……章悟が、いれば良かったんだ、ホントに。……章悟が、隣にいてくれたら、それで良かった。──あの時、一緒に」  連れてって欲しかったよと。  ぽつりと呟いた司が、オレから視線を外して。もう一度、空を見上げて静かに涙を流すのを。  痛くて苦しい想いで見つめながら。  空に向かって伸ばされていた手にそっと触れて、腕をおろしてやる。
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