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「連れてけるなら、連れてってるよ」
「──ぇ?」
呻くみたいな声が、口から零れて。
その声にまた、司の視線がオレに向く。
「そんなん……決まってんじゃん。好きな人と一緒にいたいなんて。そんなん、誰でも思うよ」
「……たきがわ?」
「一緒に。連れてけたら、どんなにいいだろって。……『しょうご』だって、きっとそう思ってるよ」
「……」
「でもさ……同じくらいに、連れてけないよ、きっと」
「……ど、して?」
「オレだって独りじゃ嫌だよ。連れていきたい。……だけど、同じくらい──生きてて欲しい。自分が無事かどうかなんて、二の次で……──大事な人に、とにかく無事でいて欲しいって、思うよ」
司の手に、触れていた手で。
ぎゅっと、司の手を握った。
「死んじゃうつもりなんて、なかったに決まってる」
「っ……」
「司と、絶対──生きていきたいって、思ってたに決まってる」
「……うん」
「司を助けて、自分も助かるつもりだったに決まってるよ?」
「……うん……」
「置いてった訳じゃないよ。……連れて行きたくても、連れて行けないよ。……だって司は、──ちゃんと、生きてんだから。……それなら、ちゃんと、生きてて欲しいって、思うに決まってるよ」
「たきがわ……」
息が、苦しい。
何かが目の前を邪魔して、よく見えない。
司の手を握ったままの指先が、痺れてる。
「──ごめん」
泣きそうに歪んだ顔で謝った司が、オレの頬に手を伸ばして。
「ありがと」
ふわりと笑った後で、オレの頬を拭う。
あぁ、オレ泣いてたんだ、なんて。その時に初めて気付いて。
慌てて服の袖で顔をごしごし拭いてたら。
ぽむ、と。
何かに──司の、手のひらに。
ぎこちなく──でも、優しく頭を撫でられて。
呆気にとられて顔を拭いてた手を下ろしたら、困った顔した司が、オレをさらに撫でてくれる。
「泣かないで、瀧川」
「……ッ」
「ありがと」
「……」
「…………ありがと」
泣き濡れた目のままはにかんだ笑顔に、うん、と。
もう一度頷いて、やっと照れ臭く笑い返した。
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