7. はじまりの予感

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「……」 「……──えーと……晃太って、言ったっけ?」  仁王立ちでオレを睨み付けたまま、何も言わない晃太にそう声をかける。  こっくりと強ばった顔で頷く晃太に、司ならまだ来てないよ、と付け足したら。  晃太は、緩く首を振った。 「……今日は……あんたに……会いに、きた」 「…………オレ?」  キョトンと見つめた先で、晃太が苦虫を100匹くらい噛み潰したみたいな顰めっ面をする。  それでもまだ自分からは口を開こうとしない晃太に苦笑して、仕方ないなと水を向けてやる。 「……何? オレに用事?」 「……司くんが……最近……なんか、明るくなったって、聞いて」 「あぁ…………何、明るくなって、なんか問題ある?」 「ッ」  あの時、司に迫っていた姿を見ているせいか、やけに尖った声が出て自分でも驚いたけれど。  オレの言葉にぐっと詰まった晃太の顔には、見覚えがあった。  オレに初めて笑いかけてくれた司を、受け止めきれずに嫉妬にまみれたあの日のオレと、同じ表情だ。  悔しそうに唇を噛んだ晃太がオレを睨み付けるその感情は、覚えがあるだけに茶化すことさえ出来ない。 「……晃太はさ。司のこと、好きなんだよな」 「っ……な、に」 「オレも好きだからさ、よく解るよ」 「何がッ」 「違うよ、晃太」 「だ、っから、何がッ!」  追い詰められたみたいな目で悲鳴じみた声を出す晃太に、穏やかに笑ってみせる。 「オレは別に、司と付き合ってる訳じゃないから」 「──っ、けど!」 「……司はさ……ずっと、淋しかったんだよ」 「……さみし、かった……?」 「独りで。章悟のこと、誰にも話せないで……。一番大事な章悟が自分のせいでいなくなって……いや、まぁ実際司のせいなんかじゃないんだけどさ。……とにかく、ずっと……なんにも誰にも言えなくて、自分の中に溜め込むしか出来なくて。……吐き出す先がなくて、意識して頑張らないと『普通』でいられなかったから、全部閉じ込めたんだよ。涙も、笑顔も」 「とじ、こめた……」 「淋しいとか、苦しいとか、そういうの。誰にも言えなくて、ずっと……独りで耐えてたんだよ。そしたらもう……閉じ込めるしかないでしょ。普通に生活するので精一杯っていうかさ──独りじゃなんのキッカケもないから、笑ったり泣いたり、できないでしょ」
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