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痛そうな顔して黙り込んだ晃太が、オレの言葉を反芻するみたいにして更に辛そうな顔をする。
──そう。本当なら晃太が一番、その役目に近かったはずなのだ。二人が付き合っていたことを、唯一知っていたのだから。
だけど晃太は、事が起きた時には既に司から離れてしまっていた。
「…………オレ……」
「だから、ただ単に、今。オレが傍にいて、色んなこと吐き出してやっと、整理し始めたとこなんだよ。明るくなったのとは、ちょっと違くて……自分の中の苦しくて暗いとこ、ちょっとずつ吐き出せるようになったから、やっと『普通』の感覚に近づいてきただけなんだよ」
「……」
まだまだだよ、と笑って見せたら。
困り顔で黙っていた晃太が、オレを──悔しそうに睨み付けてくる。
「オレのせいだって、言いたいのかよ」
「……そんなこと言ってな」
「言ってるのと同じだよッ」
悲鳴みたいな声だった。
たぶん、晃太も。司と同じように、苦しく思い詰めていたんだろう。
悲痛な声と哀しげな顔が、その痛みをありありと映していて。オレなんかの嫉妬と同じにしたら、申し訳ないような気さえした。
「誰も悪くないよ」
「っ、けど!」
「──それだけ。章悟が、みんなとちゃんと、向き合ってたってことだよ」
「っ……」
オレと違って、と声には出さずに呟いて、皮肉な笑みを唇に刻む。
「すごいよ、章悟は。あの警戒心むき出しの、野良猫みたいな司のこと、まるっと受け入れて。これ以上ないくらい、大事にしてたんだから」
「……」
羨む心が声に滲んで、ほんの少しふて腐れたみたいな声になる。
だけど晃太は、そんなオレを嗤ったりはしなかった。
「…………オレずっと……司くんのこと好きで……でも、司くんは章悟くんのことが好きなんだって、気付いちゃって……。ホントはその時にちゃんと、オレも好きだって、言えば良かったのに。……章悟くん相手じゃ敵わないって、勝手に諦めて……。応援するよって口では言ったけど、ずっと、後悔してた。……オレだって、ずっと……章悟くんなんかより、ずっと長く、司くんのことが好きだったのにって……ずっと、苦しくて悔しかった」
「……」
突然そんな風に、苦しそうに声を絞り出した晃太は、オレを見て苦く笑った。
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