7. はじまりの予感

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「章悟くんと司くんが付き合い始めた頃……二人のこと見てるのが辛くて、もうやめようって……もう忘れようって思って、司くんから離れたんだ。──なのに、章悟くんが……」  いなくなっちゃうから、と。  苦しいよりも哀しい声で呟いた晃太が、そっと震える息を吐く。  章悟のことを知っている分、オレなんかよりも複雑な想いを胸に抱えていたであろう晃太は、やるせなく首を振った。 「……司くんのとこに、行かなきゃって……思ったんだけど。…………オレ、全然……全然、諦められてなくて……。……今、会いに行ったら、訳分かんない内に、司くんにめちゃくちゃしそうだって、思ったら……恐くて、会いに行けなくなっちゃって……」 「……そう」 「……そしたら──あんたなんかと、会ってるって、知って……」 「……むかついた?」 「そんなんじゃ足りないよ」  からかうみたいに投げた台詞に、晃太は苛ついた顔を見せながらも。  妙に穏やかな声で笑って。 「もうホントに……ぶっ飛ばしてやろうって、思ったよ。なんでみんな、オレの邪魔ばっかすんの、って……」 「……」 「…………でもさ……ホントに、最近。司くん……元気になったって……みんなから、聞くから」 「……うん」 「────ありがと」 「…………へ?」  いかにも渋々呟かれた台詞が、意外すぎてポカンと晃太を見つめたら。  晃太は照れ臭そうに笑いながら、ぶっきらぼうな声を出した。 「あんたの、おかげだと、思うから」 「……いや……ぇと……」 「オレは、何も出来なかった。……恐くて、逃げてた。……たぶん、章悟くんのことからも、ずっと、逃げてた。敵いっこないって、勝手に…………ううん、たぶん、司くんからも、ずっと、逃げてた。好きって……言ったら全部、壊れる気がして。ずっと、逃げてたんだ」 「……」 「だから……司くんを、助けてくれて、ありがとう」 「こうた……」  呆然と呟いたオレに、変な顔、と暴言を吐いて笑った晃太は、オレが何か言うよりも早く背中を向けて。 「司くんのこと、よろしくね」  じゃーね、と。  オレに背を向けたまま手を振って、公園を出て行った。  *****
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