7. はじまりの予感

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「司?」 「──すき」 「へ?」 「瀧川のこと……オレ……やっぱり、ちゃんと、好き」 「つかさ……」  驚きに目を見張る瀧川の顔が涙で滲んでいたけれど、構わずに瀧川をじっと見つめた。 「訳分かんないし、……ホントに……決着とか……ついたのかどうか、分かんないけど……でも……もう……分かんないくらい、好き」 「つか」 「瀧川のこと、好き」  ぱたぱたと。  零れる涙が止まらないのは、どうしてなんだろう。  目の前で驚く瀧川が愛しくて。  胸を満たすその愛しさが、涙になって溢れているのかもしれない。 「…………ホン、トに……?」 「……うん」 「後悔とか、しない?」 「うん」 「ホントに?」  戸惑って震える声に、もう一度しっかり頷いてみせて。 「ホントに。瀧川のこと、好き」 「つかさ」  戸惑っていた瀧川の顔に、喜びが弾けて。  飼い主にじゃれつく大型犬みたいに、無邪気で純粋で真っ直ぐにオレに飛びついてくる瀧川を、よろめきながら受け止めて。 「大好きだよ、瀧川」  笑って紡いだ台詞に、無邪気に頷いて。  見たことないくらいに幸せそうに笑う瀧川の顔を、やっぱり愛しいと思った。  本当はずっと、気付いていたんだと思う。  瀧川に触れたいと思ったことだって、前から何度もあったし。  何よりも、瀧川の隣は穏やかで居心地が良くて安心出来た。  心からくつろいだ気持ちになったのなんて、どのくらいぶりだろう。  罪悪感のような、後ろめたさのような──そういう気持ちが、完全になくなった訳ではないような気もするけれど。  それを拭い去るほどに強い愛しさが、この胸に確かにあるから。  あの時みたいに流されて沸き上がったのとは違う、ゆっくりと心を満たしていく「好き」の気持ちを、大事に大切にしたいと心から思う。  柔らかく自分を包んでくれるこの幸せを、同じだけの優しさで包みたいと思うから。  無邪気に照れ笑う瀧川の頬に電光石火のキスを贈って、驚きにぴたりと固まる瀧川に、きっと恥ずかしさで真っ赤になっているであろう顔のまま、笑って見せた。 「大好きだよ、瀧川」
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