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司がオレを好きだと言ってくれた日から、心がふわふわして浮き足立っているのが自分でも分かる。初恋が叶って浮かれる少女漫画の主人公じゃあるまいし、なんて思うのに。
幸せが心を満たして、愛しさが体中を満たして。
あぁ、本当はこんなにも愛しくて苦しくて幸せなんだと、今までのおままごとの恋を恥じると同時に胸の中で詫びる。だけど今更、本人に直接謝る訳にもいかないし、されても迷惑だろう。心の中でひたすら謝り倒してから、今日もまたいつものベンチに向かう。
付き合い始めても待ち合わせの場所は変わらない。変わったのは、約束して待ち合わせるようになったことくらいだ。
時々は食事にも行くけれど、バイトや学校の兼ね合いもあってそんなに頻繁ではない。章悟のことで塞ぎ込んでいた間に小食になってしまったという司は、一回の食事量が驚くほど少ないこともあって、カフェやファーストフードでお茶をすることの方が多い。
今日はどうしようか、なんて思っていたら。
「──瀧川」
「司」
ベンチに着くよりも先に愛しい声に呼ばれて、嬉しく振り返ったら、司がどこか強ばった顔で笑っていて。
「…………どしたの? なんかあった?」
「ん……」
オロオロと声をかけたら、オレの態度が狼狽えすぎていておかしかったのか、司がほんの少し頬を緩めてくれる。
だけど司は結局、迷うままの目で躊躇いがちに口を開いた。
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