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その直後、ガルムはボクの唇を奪った。
「――!」
口内へガルムの舌が滑り込んできて、ボクの舌へ絡み付いてくる。
(そういうキスは、初めてなのに――!)
初めての感覚に驚き、声が出そうになってしまう。
「もう帰ろうか?」
キスを一旦止め、スクリーンをチラりと見て、ガルムが聞く。
「映画、終わったしね」
エンドロールを見て、どのくらい時間が経ったのか把握した。
そして、立ち上がったガルムは、ボクの手をそっと取る。
ボクは、ガルムの調子に合わせ、静かに立ち上がった。
「寮に戻ったらどうする? シャワーにするか? メシにするか?」
"本当に聞きたいこと"は聞かないあたり、彼は真面目な性格なんだろう。
「ご飯食べて、一緒にシャワー浴びて。 それから――いっしょに寝よ?」
ボクは小さな声で答える。
最後の一言を言った時、少しだけ恥ずかしかったけど。
"一緒に寝よう"の意味を察したガルムは、ボクの手を優しく引っ張って、ゆっくりと歩き出す。
「ガルムを連れて、親に会える日が来るといいな。 泡吹いて倒れてくれたら面白そうだし」
でも、親は変わり者だから、「良い人じゃないか」で済まして、あっさりOKしそうだけど。
「親があっさりとOKするんじゃないなか? 変わり者なんだろう?」
「かもしれない。 ババアなんて『狼男と少年のラブロマンスなんてステキ!』とか言いそう」
「父親は?」
「ガルムに「ウーズィを頼む」って言いそ。 2人とも常識にとらわれない人だからさ」
ガルムとボクは、笑いながら話し続ける。
◇
久しぶりに、人と"まともな会話"をした気がする。
過去の経験がトラウマになって、他人が苦手になって、学校では授業以外のことを話さなくなっていたから。 でも、ガルムと一緒なら――いつか本当の"幸せ"を掴めそうな、そんな感じがした。
◇
「カガサキ。 ひとつ聞いていいか?」
「なに?」
「ウーズィって、カガサキの名前なのか?」
ボクは、ガルムにフルネームを言っていないことを思い出した。
「そうだよ。 ボクのフルネームは『カガサキ・ウーズィ』。
ウーズィの意味はね、ロシア語で"絆"って意味なんだ」
「なんでロシア語なんだ? カガサキは日本人だろうに」
「日本は、名前にカタカナが使える。
だから、外国人風の名前をつけたんだとさ」
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