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――翌朝
目が覚めると、ボクはベッドで横になっていた。
◇
あの後、理性を失ったガルムに散々抱かれた。
ボクがいつ気を失ったのかさえ――記憶にないんだ。
◇
ガルムの姿は無かった。
荷物はあるから、出て行ったわけではないだろう。
今日は休日だから、どこかに出かけているのかもしれない。
もしかしたら、本人に昨日の記憶があるのかも。
シャワーを浴びたあと、私服に着替えたボクは、街へ繰り出すことにした。
◇
――ショッピングモール
街で一番大きなこの場所は、学校の皆がよく利用している場所だ。
もしかしたら、ガルムもここに居るかもしれない。
各フロアを歩き回っていると、映画館の辺りで、ポスターを見ているガルムを見つけた。
「――ガルム君」
名前を呼ぶと、ガルムは振り向いた。
そして、目を丸くする。
「カガサキ」
彼は動揺していた。
(昨日の今日……当たり前か)
ボクはポスターを見て、ガルムと話すのに丁度いい上映時間の映画を探した。
そして、一本の映画を見て「これだ」と、心の中で決める。
「ウェアウルフでも見ながら話さない? お金は出すよ」
「あ……ああ」
ボクは落ち着かないガルムの手を引っ張り、受付で当日券を買って、映画館へ入った。
◇
座席に座り、上映が始まった映画を見つつ、横目でガルムを見た。
「オレ、狼男なんだ」
ガルムが、一言だけ呟く。
「原因は?」
ポップコーンをひとつ、口に放り込みながら聞いた。
「わからない。 生まれつきなんだ。
今は病院で処方された薬を飲みながら、変身するのを抑えてる」
「薬」と聞いて、昨日の出来事を思い出した。
「もしかして、風邪のせいで薬が効かなかったの?」
「……ああ」
質問に答えてから、ガルムはうつむく。
「いつもなら変身しても理性があったんだ。
けど、熱で凄く怠くて、ぼーっとして……それで、バスタオル姿のカガサキを見たら、魔が差したんだ」
ガルムが掠れた声で話す。
そして、ボクの方に向き直った。
「本当に悪かった。 どう謝れば良いのかさえわからない。 だけど、本当に――!」
涙を浮かべながら、必死に謝るガルムの頬に手を当てて、ボクはそっとガルムの唇に口付けた。
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