第1章

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 ほうっておいてっていうのは伝わってた。俺は、一緒に暮らしてるのに、なんでだよって、怒りに任せて、強引なことをした。 「こんなの、もう無理かも。ごめん、なさい」  そうひとこと言って、膝を抱えてシーツで体をくるんで、背を向けた。  そんな彼女を見て、謝られる後ろめたさと、こんなふうに拒否されてどうしたらいいのかわからなくなった。  圭に「彼女、大事にしろよ」って言われて、奴にそんなこと言わせる自分が情けなくなった。  圭の想いを知ってるのに。  さなを傷つけたことを話している自分は阿呆だ。相手の気持ちを考えなくなってるくらい、今はおかしいんだ。  このままじゃ、ダメだ。少し、落ち着いて、考えろ。  さなに謝る。でも、もう、あんな態度はやめて欲しいこと。そもそも、彼女があそこまで無視した理由がわからない。俺、なんかやったか? 不安になるよ。  ちゃんと、話して。そう決めたのは、お互い、だから。それをしなかったから、随分、しんどい思いをしたんだから。  彼女も、謝った。
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