第1章

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「甘えてたんだと思う、想われてることに。突っぱねても、わかってくれると思って、ごめんなさい。でも、やっぱり、私はつらい。好きな人に触れられないの」  俺は全然、かまわないんだけど、さなは、今のままの自分の先が不安。  ふたりの、初めての日に何気に先の約束したつもりだけど。  さなには、よりどころが必要と判断。大丈夫だよ、ずっと好きだよとおそろいのシルバのリング。ほんの少し先の約束を含めた、サイズは薬指の。  リングをはめたまま、着替えて、部屋を出て行こうとしたら、さなが追いかけてきて、   「え? つけてくの」 「アタリマエ。でなきゃ意味ないデショ」 「当たり前って。なんか聞かれるかもしれないの、やじゃないの」 「むしろ、このほうが楽だと思う。ひとり身って思われなくて」 「女よけ、的、ね」  ホント、鋭いね。 「さなもはめなよ。虫よけだから」 「なんてこというの。そんなの、ないわよ。私には」  さなは賢いけど、間抜けだな。  口に出したつもりはないけど、ちら、と、彼女を横目で見たら、とたんに唇を尖らせた。  そのまま、じっと、俺の左手を見て、うつむく。 「ありがとう、ごめんなさい」 「ん、なんで謝んのかわかんない。俺がさなを縛りつけてるようなもんなのに」 「そんなふうに思わないもの」  うつむいてる彼女の頬に触れて、顔を上げる。
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