第1章

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「なら、さなもリングして」  俺を見つめる彼女の瞳が戸惑うように揺れたから、逃さないように、顔を近づけた。 「ね?」  彼女は俺の瞳に焦点を合わせて、ゆっくり微笑んだ。 「ん」    上田の言いつけを守って、ようやっと、今日。  さなの用意が終わって、控室でふたりきりにしてもらえた。 「ん、綺麗。似合ってる、いいね」 「えへへ、ありがとう。そっちもいい男ね。あいかわらず、カッコよくて」 「言うね」  彼女は椅子から立ち上がり、くるりと一回まわってみせた。  陽の光がドレスを光らせて、彼女をライトアップしてる。   そっと、ウエストに腕を回して、彼女を見下ろす。  見上げる彼女の瞳が何かを企んでるように、細めてる。俺の腕の中で、小さく手招き。  ん? と彼女の口元に頬を寄せる。  ふたりしかいない部屋で、内緒話って変だけど。
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