第1章

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「え?」  彼女から、顔を離して、正面から見る。   さなは小首をかしげて、微笑んだ瞳を上目づかいで俺を見る。 「ん、と」  視線を下にして、ウエストから左手を離して、そっと、さなのお腹に触れる。   なんか、言いたいけど、どうだろう、相応しい言葉って?  さなに視線を戻したら、潤んだ瞳をキラキラさせてて。  そうしたら、口が自然に開いて、言葉が出た。 「ありがとう」   彼女は、ぱっと華やかに微笑んで俺の手に両手を重ねた。  ウエストに残ってる腕に少し力を入れて、彼女を抱き寄せた。  あと、何個かの季節を過ぎれば、今、俺の左手の下にある、新しい命が生まれる。  俺とさな、の。  嬉しくて。
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