第1章

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 後にも先にも、この時だけ、頭を抱えた。  さなが、いい子いい子するように、か、も諦めなさいの意味か? 俺の頭を撫でた。  家に帰ると、まず、ピアノの部屋を確認。明かりが点いていなくても、点けて。  明かりも点けないで、椅子や床に寝てることあるから。床は、夏だけど。  一度、門の鍵は閉めてあるのに、玄関は掛かってなくて、さながいるはずなのに、ざっと探しても、居なくて、慌てた。  まさかと思って、明かりの点いていないピアノの部屋を見たら、床で楽譜を広げて、寝てた。それ以来の、ルーティン。  今日は、居ないな、と、明かりを消す。リビングから、テレビの音が聞こえて、そっと、ドアを開けると、彼女はソファで寝てた。  テレビを消して、彼女を覗き込むと、規則正しい寝息が聞こえる。  部屋着に着替えているから、と、額の辺りまで、鼻を近づけると、バスにあるソープの香り。  頬に触れて、最近、気になることを確認する。少し、痩せたかなと思う。  彼女は本社勤務になって、一カ月くらい。もともと、入社の時点で決まっていたのを、サロンで働きたいと希望して、いつか、本社に、ということだったらしい。
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