第1章

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「さな、部屋に行くよ」  一応、声をかけて、彼女を抱きかかえ、二階へ。こういうの、もう慣れたもんだな。  ベッドに横たえて、シーツを掛ける。少し、身じろぎして、 「ん、ごめ、なさい」  薄く瞳を開けて、手で顔をこする。 「いや、起こしたかな」 「ううん、ん」  なんか、たまらなくて、思わず、くちづけをする。  ゆっくり、押し込むように、重ねて。夢うつつなのに、彼女も受け入れてくれる。  そっと、頬に触れるひんやりとした、指先。  いつからか、俺のどこに触れても、震えなくなってる、指先。  彼女の手に自分の手を重ねて、唇を離す。 「待てない? も、寝ちゃう?」  眠りそうな表情なのに、ふわっと微笑んで、 「待って、る」  頬から、手を離して、左手の薬指にくちづけ。シルバのリングがあたって、少し冷たい。彼女がくすぐったそうに瞳を細めて、ぴくんと肩を上げた。 「髪、ちゃんと乾かさないと」  彼女の指が俺の髪をすいた。タオルドライだけだから、少し、湿ってるかも。 「だって、さな、もう寝ちゃいそうだから」 「ん、信用ないな……あっ、ダメ!」  耳の下から唇を離して、ちっと舌打ちすると、さなはむっとして俺の肩を押した。
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