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私に近づく足音。そして、真後ろでピタリと止まる。
気配をひしひしと感じて、仕事の手も止まってしまった。
座っている私をすっぽりと覆う影。また心臓が騒ぐ。
この距離で一体何をしようとしてるのだろう。息もまともに出来ない状況で彼の様子を伺っていたら。
「…………」
デスクには傘を持つ彼の左手。ギィと音を立てるイス。
私の頬には、柔らかくて温かい感触。
一瞬、思考停止してしまった。けれど、
昔の恋の記憶がその正体をすぐに理解させてくれた。
触れているのは彼の唇で。
今、私は頬にキスをされている……。
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