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「……はい、これ」
私は緊張の面持ちでバッグの中の折り畳み傘を差し出した。
その顔を見られたくなくて、そっぽを向いた状態。心臓も、激しく鳴る。
「ないよりは、マシだと思うけど……?」
「え、センセーはどうすんの」
「私は……置き傘があるから大丈夫……」
「…………」
「とにかく。人の好意は素直に受け取りなさい」
こう言った後、躊躇いがちに折り畳み傘を手に取る彼を横目で確認。そして、
「気をつけて帰るのよ。それじゃ」
まともに顔を見ないまま、逃げるようにしてその場を後にした。
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