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04.
「大体のところは理解できました」
ハクは静かに言った。
「ちょっと意外だったな。ハクは、もっとお母さんに会いたいって、単純にそう考えるかと思っていた」
「そうね。会いたいという気持ちは、もちろんあるけど……」
ハクは少し考えて言葉を継ぐ。
「そう、もうちょっと前だったら、今みたいに落ち着いて聞くことが出来なかったかもしれない」
「……もう、お母さんに対する想いが薄れちゃった?」
「いいえ。自分でも上手く言えないけど、忘れたわけでも、もちろん嫌いになったわけでもない」
「ハク様は、おそらく精神的にお母様に頼らなくなったのでしょう」
「それって? どういうこと?」
「しっかりとした自信をお持ちになり、心に余裕が出来たのです。言い方を変えれば……」
「うん」
「ハク様は、大人になられたのです」
「大人? ボクからすれば、ハクはずっと大人だけど……」
「それはクークラさんから見ればそうでしょう。なんと言いますか……親という、自分を守ってくれている存在に依存せずとも、一人で立ち、一人で行動できる、そういう大人になられたのです。ハク様は子供の頃、ミティシェーリ様を始めとした大人たちに、縋ることが出来ない状況にありました。だから、氷の種族として身体は成人されても、精神的には守ってくれる親に依存したいという欲求を捨てきれなかったのではないでしょうか」
ハクは、何やらこそばゆい気分になってきていた。
「そ……それはそうなのかもしれませんが……その……キキさん?」
「そういった精神的な親の庇護から、ハク様は自ら離れられたのでしょう。親元から離れるということは、親を忘れ、嫌いになるということではございません。もちろん、過程においてはその庇護をウザったく思うこともあるのかもしれませんが、人は、そこを離れて初めて一人で生きていく強さと、そして精神の自由を手に入れるもの。ミティシェーリ様の魂も、それを知ったら喜ぶのではないでしょうか。クークラさんの目から見ても、ハク様は変わられたでしょう?」
「どうだろう……わからないけど……でも確かに、前に比べて落ち着いた感じは、するかも」
「あの……キキさん……恥ずかしいんですけど……」
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