第二章:墓参り

4/9
前へ
/51ページ
次へ
02.  ブレイブハートで飲んでからしばらく後。  その時に購入した酒瓶を手に、キキさんは今度はハクの部屋で飲んでいた。  その日、ハクがキキさんに、アルバイトを始めるきっかけは何だったのかを聞かれ、異世界に行ったマスターの事や、館の管理をしていたら貯金が減ったこと、そしてブレイブハートのマスターにここを紹介されたことなどを話した。  その流れで、先日のマスターとの会話も話題になった。  キキさんは、ハクに今まで会った人のことを聞いた。その中に、ブレイブハートのマスターのような人はいたかと。  ハクは、その生涯で会ったことのある人の数を指折り数えて、氷の種族の仲間たちを除けば、本当に数える程度ですねと自虐的に笑った。  母であるミティシェーリやその護衛官だったゲーエルーはともかく。  著名な氷の種族としては、戦史書では死霊使いとして語られているヴァーディマや、シャドウサーバントの使い手であるチェーニが居る。  しかし、ヴァーディマは戦争が始まってからは近寄りがたくなっていき、チェーニはもともと別のグループの参謀格で、この砦に立てこもってから初めて会った。あまり話は出来なかったと、ハクは言った。  母亡き後は、まず下の大地の軍人たちに連行された。  その時に会った人たちは皆、敵愾心がむき出しで、恐ろしいという心すら麻痺し、何も考えられずにただ怒鳴られていた記憶がある。  その後、自分の知らないところで勇者様が私を殺さないよう発言したらしく、ある日を境に境遇が一変した。  軍隊から私を引き取った国教会の人間達は、それまでに比べれば丁寧に対応してくれた。  しかし、終戦直後は絶望の中で慌ただしく過ぎたので、実際の所、会った人たちのことはあまりよく覚えていない。  もしもそのマスターと出会っていたとしたら、この期間の事だろう。  その後、砦跡に幽閉されてからは、それこそ数えるほどしか人と会わなかった。  基本的には、担当主教。それのみ。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加