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03.
シフト三日目が終わり、普段ならば館に帰るキキさんが、この時は砦跡に待機していた。
ハクは、ちょっと用があると言って、工房に入っていった。
キキさんは、墓参りとのことであらかじめ持ち込んでいた黒いスーツを着込み、供えるための酒瓶を入れたバスケットを手にしていた。
クークラにも黒いドレスを着せた。
これは以前、キキさんが趣味で仕立てたものだ。
クークラの少女人形の身体を採寸して作った服はまだ何着もある。
すっかり墓参りの格好をした二人が、三角屋根の工房の前で待っていると、ハクがいつもと変わらない服装で出てきた。
手には、氷結晶受領の時にしか使わない、金属製の箱を持っている。
ハクは、二人が着替えているのを不思議そうに眺めていた。
氷の種族には、喪服という観念が無いようだった。
キキさんが生真面目な感じでハクに聞いた。
「わたし、氷の種族の先祖供養の作法は知らないのだけど、どうするの?」
「私もよくわかっていません。ポスカゴリ台地に居た頃の記憶もほとんど無いから……」
「そもそも……墓参りって何?」
クークラの言葉に、ハクは寂しそうに笑いながら言った。
「こんな感じですし。それに、正確に言えば母や仲間たちの墓もここにはありません」
「そうね……」
「でも、この砦跡は、ある意味で墓標と言えると思います」
すでに日没近く。
紫に変わりゆく夕日が、廃墟となっている砦跡全体を昏く映し出している。
それは、かつての激戦の跡でもあった。
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