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「何年か前に母の魂がとどまっていると二人に聞いて、ずっと考えていたんです。母に感謝を表したいって。墓参りの作法はわからないけど、それを知っていても、ここではあまり意味を成さないんじゃないかって」
確かに、普通の環境ではない。
「だから私なりに、母や、その仲間たちに思いを馳せることを以って、砦跡での墓参りにしたいと思います」
ハクは、そう言いながら、手に持っていた箱の蓋を開けた。
凄まじい冷気が溢れ出す。
ハクを中心に、下生えの草に白い霜が降り、登り始めた月の光を浴びてキラキラと輝いた。
ハクは、氷の種族としての能力でその冷気をコントロールして、箱のなかに押し留めた。
そして、箱の中身の氷結晶を取り出すと、調度よい大きさの石を見つけ、その上に置いた。
月光に照らされたその氷結晶は、キキさんがかつて見た物の中でも、最も繊細で、最も美しかった。
「あれ以来、工房に篭もる頻度を上げて、余計に手間を掛けて創った特別製の氷結晶です。自分の作品としても、最高傑作と言っていいものに仕上がりました」
ハクは少し誇らしげに言った。
「これを創れるほどになったということを、母に報告したいんです」
「それがお墓参り?」
「ここでは。それがお墓参りです」
「うん……」
ミティシェーリの魂が、ハクの周りに集まってくる。キキさんとクークラはそれを感じ取っていた。
「なるほどね、確かにこれは……」
お墓参りだわ、とキキさんは思った。
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