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04.
ハクはミティシェーリの魂を感じ取ることは出来ないはずだ。
しかし、そう考えていたクークラの目の前で、ハクはまるでその魂が集まってくるのが分かっているかのように、宙に向かって話しだした。
お母さん。
今まで心配をかけてごめんなさい。
でも。
もう大丈夫です。
今の私は、一人ではなく、自分の子であるクークラと、助けてくれる友人に恵まれました。
ここには居ないけど、お母さんをずっと守ってくれたゲーエルーさんも元気すぎるほど元気です。
お母さんに教えてもらった氷結晶創りも。
私なりに技術を高めて、ここまで昇華することが出来ました。
まだまだ至らないところも多いけど。
でも昔みたいに。
泣いているだけ、我慢しているだけの。
そんな私ではなくなりました。
見守っていてくれてありがとう。
それを知った時、本当に嬉しかった。
ありがとう。
それを伝えたかった。
お母さん。
ありがとう。
本当に。ありがとう。
宙に向かって話すハクの姿に、クークラはなぜか嬉しさが込み上げた。
その想いを共有したくなり、振り返ってキキさんを見た。
キキさんは、ハンカチで眼を抑えていた。
クークラはびっくりした。
見てはいけないような気がし、慌ててハクに目線を戻す。
キキさんが「ハクは強くなった……」と独りごちる声が聞こえた。
ハクがひとしきり感謝の言葉を述べ終わり、二人の方に振り向いた。
月の明かりに照らされて微笑むハクは美しく、彼女の子であることを、クークラは誇らしく思った。
恐る恐るキキさんの方を見てみると、その顔には涙の跡など微塵も残っておらず、むしろ普段よりもキリっとした表情をしていた。
クークラは、なぜだか少しホッとした。
キキさんは、それでこそキキさんだ。
ハクは箱に氷結晶を戻した。
蓋を閉めると、クークラがハクに話しかけた。
「この氷結晶も提出しちゃうの?」
「これを創っていたことはスヴェシさんも知っているし、氷結晶は完全に管理されている以上、当然、これも提出します。まぁ墓参りのために創っていたとは思ってもいないでしょうけど」
「せっかくの記念の品なのに……」
国教会もスヴェシも嫌いなクークラは、不満を隠さなかった。
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