第二章:墓参り

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「墓参りは、モノが重要なんじゃなくて、自分が故人に何を伝えたかったのかが重要なのよ、多分。だから、これ自体にそんなに拘る必要はないの」 「それでも……墓参りのために心を込めて創ったものなのでしょう? 作品としても、以前のものにも増して美しいのに……」  キキさんがクークラの肩に手をおいて言った。 「キキさん。これからも氷結晶は創れますし、多分、これ以上のものも、そのうちモノにする事が出来ると思います」  ハクは自信を持って、そう答えた。 「だから、惜しくはないんです」  ……  …………  翌日。  キキさんが自分の館に帰った後。  リビングでハクと二人きりになったクークラは言った。 「墓参りの時……」 「うん?」 「ボク、いつもよりもはっきりとミティシェーリの魂を認識できたんだ」 「お母さん、喜んでくれてたのかな?」 「多分。……それで……」  クークラは少しだけ言いよどんだ。 「……同じような機会があれば、ボクはミティシェーリの魂を選別して、モノに宿らせることが出来る……と、思う」 「それって……」 「生前のハクのお母さんが復活するってわけじゃないけど。でも……多分これはキキさんにも出来ない」  ハクは、ギュッとクークラを抱きしめた。 「ハクはどうしたい?」 「お母さんには会いたい。けど……」  ハクはクークラの額に自分の額を当てて言った。 「けど……それはしてはいけないことだと思う」 「なんで?」 「生と死には、きっと犯してはいけない境界があるの」 「それって……寂しくないの?」 「寂しいよ。でも……親しい人との別れに囚われてしまっては、生き物は前に進めない」  ハクはクークラの眼を見る。 「私は……そう、まだまだ先の話だけど、私は貴方より先に死にます」 「……そんな……」 「いい、クークラ。その時、貴方は、その悲しみを克服することで前に進みなさい。そうした後、たまに思い出してくれれば、私はそれで十分に満足すると思う」  ハクの言葉を聞き、クークラが黙ってしがみついて来た。 「皆が皆、同じ考えではないと思うけど。でもクークラ。私はそう考えているの」  ハクは、クークラの身体を、しっかりと抱きとめた。  その日以来。  砦跡を取り巻く大気に満ちる魂の中から、異質な感触を保っていたミティシェーリの魂が、ゆっくり、ゆっくりと周りに同化し始め、その存在は次第に希薄になっていった。
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