第一章:愛情に包まれて

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「あ、はい。それは本当に。この……」  言って、クークラは自分が宿っている人形の身体を見た。 「この身体にアニメートをかけてやってみました。眼があるから、円形モップと違って拭き残しなく出来るので、思ったより早く終わったんです」  こうして考えると、生き物の身体ってよくできてますよね、とクークラは言う。  何かに特化しているわけではないけど、眼と手と脚と耳と。他の感覚器官も含めて。組み合わせれば本当に何でもできる。  そんな汎用性の高い運用なんて、わたくしには出来ませんわ。キキさんは心のなかで舌を巻く。  アニメートの術式を施しやすい死体だったならばともかく、こんな複雑で繊細な構造の人形でやるのは、とても無理だ。  いつか、クークラに「免許皆伝です」と言ってあげたいと思っていたのだが、その機会を見極める前に、いつの間にかクークラはずっと先を行ってしまっていた。  そのくせ、まだキキさんの方が優れた術者だと思っているフシがあるから、余計に言い出せなくなっている。 「あ、そうだ。今日も夜、ちょっといいですか?」 「なんでしょう。ここの掃除もほぼ終わりましたので、難しいことでなければ今でも大丈夫ですが」 「実はその……最近、アニメートの憑依体と、自分の意識が重なる時があるんです。ええと、例えば今だったら、自分がこの小さな人形に憑いて、大気に満ちる魂で動かしている大きい人形の近くに居たりすると……」 「……大きい人形にも、自分が乗り移っているように感じる……と?」 「はい。アニメートで動いているはずの大きい人形が見ているものが分かる時があったり、あるいはアニメートの憑依体の動きを少しくらいなら操れたり。自分と、アニメートで動いているものが繋がっている感じなんです。大気に満ちる魂が動かしているはずのものを、さらにその外から自分が操作しているような感じ……です。キキさんはそういうことは?」
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