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03.
「お母さんの……魂?」
「うん! ボクも、キキさんも、多分そうだと思うんだ」
……
…………
砦跡に残る異質な魂は、おそらくはミティシェーリだろうと言うことで意見が一致すると、クークラはキキさんが驚くほどの熱心さで、それをハクに伝えたがった。
クークラは、ハクは母親に会いたいはずだと力説した。
「ハクは、ボクと違って親にかまって貰えないまま、死に別れてしまった。ボクだって……その、ハクが工房に篭ってしまっているときは、少し寂しい。ハクは、その何倍も寂しかったはずだと思うんだ」
キキさんは、ハクにそれを伝えることには反対しなかった。
ただし、ハクは大気に満ちる魂を感じ取る能力がない。
伝えたとしても、それは無駄になるかもしれない。
「わたくしやクークラさんのように、それを感じ取れるほうが珍しいのです。わたくしも、素質があった上で努力して身につけました。生まれつきその感覚を持っていたクークラさんには理解し難いかもしれませんが……」
「……解らなくはありません。ハクのお母さんの魂は、ハクが工房から出てくるたびに、いつも取り巻いていた。でも、ハクはまったく気づかなかったから」
それでも、その存在が砦跡を……ハクのまわりを取り巻いていると思えば、ハクは喜ぶと思う。
クークラの意見には、キキさんも同意した。
……
…………
「私が感じ取ることが出来ないだけで、お母さんはずっと私を、見守っていたのかもしれない……と」
「実際的な事を言うならば、おそらくそのような明確な意識はないでしょう。ミティシェーリ個人としての自我や記憶が残っているとはとても思えません」
「うん、確かに、もっと単純な、感情とか反応とか、そういうもので動いているようにも見える……」
「しかし、その独自の感情が残っているだけでも凄いことです。相当に精神力の強い女性だったのでしょう」
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