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「キキさんに教えてほしいのですが、母のその状態は、あまり自然なことではないのでしょうか?」
「生きているものから離れた魂のほとんどは、大気に満ちる魂に混ざりこんでいきます。混ざり難いのは、普通は何か強烈な恨みのような、強い感情を持ったモノだけ。それは極少数ですから、自然なこととは言えませんね」
思っていたよりも淡々としているハクを見て、クークラは少し首を傾げた。
もっと「お母さんの魂が残っているのであればぜひ会いたい」という態度を取るかと思っていたのだ。
「……他と混ざりにくいというその魂は、辛くはないのでしょうか?」
「魂が何かを感じているのか、それすらわたくしには分かりません。まして、幸福とか不幸であるとか、そのような高度な感情を持っているのかなどは、なんとも。ただ、混ざらない魂には、負の感情を持って身体を離れたモノが多く含まれていると考えられます。これは、負の感情のほうが、より単純で、その分強いからだと言われています」
「母の魂は違う?」
「スヴェシへは敵意みたいな負の感情を持つけど、ハクの周りにいる時には、むしろ逆の感じになるよ」
キキさん以上に鋭敏な感受性を持っているクークラが答えた。
「だから、単純に負の感情だけで動いているわけではないのは確か」
「……どちらにせよ、幸福なのか不幸なのかは、肉体を持って生きている身では判断がつきませんね。もしかしたら、多くの魂が、大気に満ちる魂に練りこまれていく事の方に恐怖しているのかもしれませんし」
「最後に聞かせてください。お母さんがそのような状態になったのは……その、やはり私が心配だったからでしょうか?」
「……その可能性は、少なからずあります。子を思う母が皆、混ざらない魂のような存在になるわけではありませんが、しかしその気持ちは、とても強いものでしょう」
「ハクの周りにやってくるし、関係ないはずがないと、ボクも思う」
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