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唐突にちゅっと柔らかいものが唇にふれ、涙が止まる。
みるみるうちにあたまのてっぺんまで上がっていった熱で、黙ってしまった私にやっぱり、蔵田課長はおかしそうにくすくす笑ってる。
「ナルの顔、もっとよく見たい。
それに」
蔵田課長の手が眼鏡を引き抜くと、顔が傾きながら近づいてきた。
唇にふれた柔らかいそれは、まるで感触を楽しむかのように、私の唇を啄んでる。
たまんなくなってはぁっと小さく甘い吐息を漏らしたら、あたたかくぬめった感触が入ってきた。
求められてぎこちなく求め返すと、肩を掴んでいた蔵田課長の手に力が入る。
唇の角度が変わるたび、どちらのものともわからない熱い吐息が漏れた。
溺れてしまいそうで怖くなって、思わず蔵田課長のシャツを掴んだら、ますます激しくなっていく。
身体中を駆け回る熱は出口を求め、涙になって落ちていった。
唇が離れると、指で涙を拭ってくれた。
じっと私を見つめる濡れた瞳はいつもと違ってて、いつまでたっても心臓は落ち着かない。
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