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「おい、もったいぶらず先を話せ!」
征司はもう
僕のことなど関係ない様子で九条さんに詰め寄る。
天宮家の次期当主。
それこそ
この世に生を受けた時から
征司の一番の関心事だったんだ。
あの家を継ぐ。
この人は
そのために生きてきたと言っても過言ではない。
「意見は別れた。遺言どおり本家以外の人間も名乗りを上げたが貴恵が猛反発した。本家の跡取りがいるのに分家がしゃしゃり出てくるなんて前代未聞だと。彼女の剣幕たるやそりゃすさまじくて――」
女王様のことだ。
想像に難くはない。
「ついには血縁を蔑ろにするなと、先祖に対する冒涜だと騒ぎ始めた。それで――思いもよらないことになった」
「思いもよらないことって……」
「生前君らのお父様と最も親しくしていたというご老人が、古い手紙を取り出したんだ。その方は『この手紙こそ前当主の本当の遺言だ』と仰られ、手紙を読み始めた」
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