7/11
前へ
/64ページ
次へ
どこの学部何だろう? そんなに忙しいんだ…… 何度か先輩をチラチラと見ながら、紫陽花の続きを書き始めた。 大まかなスケッチができたから、リュックからペットボトルを取り出して、小さなバケツ代わりの容器に水を入れた。 水彩絵の具をのチューブからいくつかの色をパレットに押しだして、紫陽花に近い色をゆっくりと混ぜて作りだしていく。 今日色を作りだすのは少しだけ。 同じ景色も数日経つと色も変化していく。 だから、その変化もこの中に閉じ込めたくて少しだけ。 いつの間にか雨の音が聞こえなくなって、ガレージの隅からリズミカルにぽたぽたと屋根から流れる水が落ちる音だけになっていた。 そろそろ…帰ろうかな。 そう思って道具をまとめながら、奥で眠っている先輩を思いだした。 「先輩…雨、やみましたよ」 「ん……ふあぁぁぁ。良く寝た…ありがとな」 大きく伸びをして、先輩がゆっくりと立ちあがった。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加