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「えー、先輩私じゃだめですか?」
私の隣にいた子がそう言って私を押しのける。
「お前はダメ。俺はこいつと行きたい。
こいつがいかないならこのチケットお前にやるからほかのやつと行けよ。
なぁ...美雨行く?行かない?」
じっと見つめる瞳がまっすぐ私に刺さる。
声が…出てこなくてゆっくりと頷くことしかできなかった。
「じゃあ決まり。これ俺の番号。いつでもいいからちゃんとかけろよ」
手の中に渡されたメモ。
「……はい」
必死に振り絞って出た言葉がそれだけ。
私はその後も何もなかったかのようにアルバイトを黙々とこなした。
一緒に行きたいと言っていた女の子にはチクチクと小言を言われてしまったけれど…
そんなことよりも、私はポケットに押し込んだ先輩のメモと渡されとときに触れた手のぬくもりがいつまでも消えなくて
心の中は大暴走していた。
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