雨やどり

２

『明日大学の前で待ってて』

「あの…本当に私でいいんですか？」

『美雨と行くって約束したし』

「…」

『じゃあ、明日』

ピアスを開けてから6日後。
先輩から電話がかかってきて、美術館に行くことになった。

彼女と行かなくてもいいんですか？
って、聞こうと思ったのに飲み込んでしまった言葉。

気付いたら痛みの引いた耳たぶ。

【デート楽しんでね】

美琴から届いたメッセージに【そういうんじゃないってば】って慌てて返事をしたけれど、男の人と二人きりというのはあまり経験のないことで。

どんな格好したらいいのかな。
そうやって悩んだ結果は、いつもとほとんど変わらない服装。

いつもと同じお団子ヘアに、制作がない時に履く膝が見え隠れする柔らかなスカート。

…画材にお金がかかるから、服なんてあまり持っていないんだし。
デートじゃないんだし。

これでいいじゃない。

そう言い聞かせながら校門前に一人立つ。