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琥珀は、キレイな飴色。 図書館で見つけた本には小さな虫が閉じ込められた琥珀の写真もあった。 琥珀色……ではない。 あの人はやっぱり赤だと思う。 人気の少ない校舎裏の小さなガレージに折り畳みの椅子と画材を抱えて持っていき、雨に濡れる紫陽花を見つめた。 青紫に赤紫。 色のグラデーション。 雨粒。 そばの街灯の光。 雨の日にしか見られないこの色のコントラストが好きで、今日は水彩絵の具も持ってきた。 荒く削った鉛筆でスケッチ。 講義を受けることも嫌いではない。 みんなと同じものを書くのも同じ。 でも、こうやって好きなものを一人で無心に製作できるこの時間は、一番好き。
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