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それから二十分程かけて、清人は粗方の説明を終えた。
途中で聡の反論や突っ込みが入り、二人で論争になりかけた事が何度かあったものの、無言の清香の一睨みですぐその場は収まる。そして全てを聞き終えた清香が、真顔で腕を組みながら、些かわざとらしくしみじみと言い出した。
「へえぇ、なるほどねぇ~。よぉぉ~っく、分かったわぁ~。お兄ちゃんと聡さんは、どちらも由紀子さんが母親の、異父兄弟ってわけかぁ~。どうりで、どことなく似てるとは思ってたんだよねぇ~。懇切丁寧な説明を、どうもありがとぅ~」
(清香、言い方がもの凄く嫌みだ)
(は、針のムシロだっ……)
チクチクと棘が刺さる様な物言いに、男二人は身の置き所が無い居心地悪さを味わう。そんな中清香が聡にチラリと視線を向け、呆れた口調で言い出した。
「それで? 聡さんは由紀子さんの為に、面倒くさい義理の妹の私に近付いて、お兄ちゃんに渡りを付ける為、情報収集の一環で私と付き合うふりをする事にしたんだ~。孝行息子の鏡だよねぇ~」
「清香さん、それは誤解だから! 第一、俺達の話をちゃんと最初から聞いてくれていたら」
しかし清香は聡の訴えになど耳を貸さず、今度は皮肉っぽい視線を清人に向けた。
「それで? お兄ちゃんはそこら辺の事情を、綺麗に私に隠したまま、陰険かつ姑息な手を使って聡さんの仕事を散々邪魔した挙げ句、大病したばかりの由紀子さんが、そのまま死んだら良かったとかの暴言を吐いたわけだ~。まあ、気持ちとしては分からないでも無いけど、人として実際に口に出すのは、どうなんだろうなぁ~」
「あの、清香? 確かにそれは、俺も少し言い過ぎたかと」
そしてボソボソと弁解しようとした清人の台詞を、清香の金切り声が遮る。
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