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「本当に、いい加減にして!!」
そう叫びながら清香はソファーから勢いよく立ち上がり、涙目になって二人に怒声を浴びせた。
「私の周りって、揃いも揃ってとんでもない嘘吐きばっかり! 二人とも最低よ、大っ嫌い!!」
言うだけ言ってリビングから駆け出して行った清香を、聡が一瞬遅れて追いかける。
「清香さん!」
しかし聡の目の前で恐らく清香の自室であろう部屋のドアが閉まり、ご丁寧に中から施錠される音が聞こえた。
「清香さん? お願いだからここを開けて話を」
「五月蝿い!! とっとと出てけっ!」
狼狽しつつもドアを叩きながら呼びかけた聡だったが、清香の叫びと共にドガシャッ……と、固くてそれなりに重量のある物が派手に投げつけられた音と衝撃がドア越しに伝わり、聡は現時点での説得を諦め、取り敢えず清香が落ち着くまで待たせて貰おうとリビングへと戻った。しかしそこで予想外の光景を目にする。
両肘を膝に乗せ、俯いて文字通り頭を抱えて微動だにしない清人に、聡が恐る恐る近付いてみたが、その途中でインターフォンの呼び出し音が鳴り響いた。しかし清人が相変わらず無反応な為、聡は慎重に声をかけてみた。
「兄さん、呼び出し音がしていますが」
しかしそれでも反応が皆無の為、心配になった聡が屈みこんで顔を覗き込もうとした。
「兄さん? どうしたんですか。どこか具合でも」
「清香に、大嫌いと言われた……」
そのままの姿勢でぼそっと呟かれた内容に、聡が眉を寄せる。
「はあ? そんなの兄弟喧嘩か何かで、お約束の様に口にする言葉でしょう?」
「清香と未だかつて、喧嘩なんかした事は無い」
「あのですね……」
本気で頭痛と眩暈を覚えた聡だったが、しつこく鳴り続けている呼び出し音を放置もできず、舌打ちしながら聡がインターフォンに歩み寄った。
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