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しかし室内は静まり返っており、相変わらず無反応な為、真澄は先程よりはやや大きめの声で、再度呼びかけた。
「さ~や~か~ちゃ~ん。五つ数えるうちに、ここを開けてくれないなら、清香ちゃんがクローゼットの奥に隠してある箱の中身の事を、清人君に洗いざらい教えちゃうわね? それでも良いかしら?」
リビングのドアの所まで出て来て、真澄の様子を窺っていた男達は、(何の事だ?)と首を捻ったが、そんな事はお構いなしに、真澄が大声でカウントを始めた。
「じゃあ数えるわよ~。ひとぉ~っつ、ふたぁ~っつ、みいぃ~っつ、よおぉ~」
「真澄さんっ! 何で、どうして“あれ”の事知ってるのっ!?」
「開けてくれてありがとう。お邪魔するわね」
ガチャガチャッと、慌ててロックを外す音が聞こえたと思ったら、狼狽しまくった清香がドアを開けて顔を出した。その体を押し戻しつつ、真澄が自分の体を室内に滑り込ませ、素早くドアを閉めて再び施錠する。
「清香!」
「清香さん!」
「お黙り! リビングから一歩も出ないで、大人しく待っていなさい!」
慌ててドアに駆け寄ったものの再び閉め出され、清人と聡は必死の形相で声を張り上げたが、室内から真澄の怒声が投げつけられ、顔色を無くしてリビングへと戻った。その気配をドア越しに窺っていた真澄の背後から、清香の声がかけられる。
「あのっ! 真澄さんっ! どうして“あれ”の事っ!!」
そこで驚きのあまり、口をパクパクさせている清香に向き直った真澄は、思わず失笑しながら宥めた。
「ああ、さっきのあれ? ちょっとカマをかけてみただけなんだけど。年頃の女の子には家族に見られたくなくて、机の引き出しとか本棚の奥とかに隠してある物が、一つや二つあるのはお約束じゃない? 私の勘働きも、なかなかのものよね」
「……引っかけられたんですか」
それを聞いてがっくりと項垂れた清香に、苦笑しながら真澄が促す。
「せっかくだから、その隠している物、見せて貰えない?」
「だだだ駄目です、たとえ真澄さんでも、絶対に駄目ぇぇっ!!」
再び狼狽しまくって拒否する清香に、真澄は真顔になって口を開いた。
「それは残念だけど、しょうがないわね。その代わりに、ちょっとお話ししましょうか。清香ちゃんが帰宅してからあった事を聞いたけど……、大変だったわね」
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